障がい特性② ~障がい特性と雇用における配慮~

障害のある方が一般企業に就職する際、それぞれの障がい特性に応じた課題や配慮もでてきます。自身の障がい特性を理解して就職活動をすることでミスマッチを防ぎ、雇い入れる企業はその特性を把握したうえで環境を整備することで、継続した雇用に繋げることが可能となります。

「障害者雇用」は着実に広がりつつあるものの、採用活動や雇用後の安定就業面で課題を抱え、なかなか雇用に踏み切れない企業も多くいます。雇用を進めるためには、障がい特性への理解や採用・安定就業・定着のための取り組みが必要となるでしょう。

障がい特性に関するこちらの記事では、2回に分けて「自身の特性の把握(当事者向け)」と「障がい特性と雇用における配慮(企業向け)」について取り上げていきたいと思います。

今回は、障がい特性と雇用における配慮について見ていきます。

障がいの種別と配慮

内部障がいや発達障がいなど、外見上ではわかりにくい障がいの方もいます。その多様性を理解し、個人にあった支援が何であるのかを検討することが重要です。さらに、障がいのある方の中には重複して障がいがある方もいるので、個々のニーズを確認することも必要です。

障がいの特性や考えられる支援策について理解することで、障がいのある方に対する合理的配慮を検討することができます。それによって、職場定着を促すことが可能となるでしょう。

こちらでは大まかな障がい特性と配慮について、まとめてみました。

〇肢体不自由 ・・・病気やケガなどによって、手や足、体幹部分に機能障害がある方で、日常生活において必要な基本的動作に不自由が生じている状態を指します。

義足の方や杖を使用して歩行する方、車いす使用の方など

【配慮のポイント】

・棚や机の高さ調節、備品の配置位置など勤務場所の工夫

・通路幅の確保やトイレのバリアフリー化

・手すりやスロープの設置

・駐車場の確保 など

〇視覚障がい・・・全く見えない全盲の方、眼鏡等の矯正があっても視界がぼやける弱視の方、視野の中心部分が見えない、一部分しか見えない視野狭窄の方といったように、その程度は様々です。移動の際に、杖や盲導犬が必要な方もいます。

【配慮のポイント】

・点字表現や情報の読み上げができる音声ソフト、文字の拡大機能に対応したPCの導入

・社内のレイアウトに慣れるまでの付き添い

・転倒防止のための荷物の配置移動 など

〇聴覚障がい・・・手話を第一言語とする全く聞こえない「ろう者」の方、話し言葉を習得後に失聴した「中途失聴者」の方、聞こえにくい「難聴者」の方などがおり、難聴者の方の聞こえ方は個別に異なります。個々の聴力や育ってきた生活環境、発話レベルには個人差があるため、それぞれに合わせた配慮やコミュニケーションをとることが重要です。

【配慮のポイント】

・口語等を用いる際には表情や口元が見やすいよう、ゆっくり、はっきり対面で話をする

・内容が正しく伝わっているか確認し、重要な点は紙に書くなどの視覚を用いた正確に伝える方法も併用

・音声を文字化できるツールや手話通訳の導入 など

〇知的障がい・・・他の同年代の方と比較して、知的機能が緩やかなペースで発達していること。初めてのことが苦手、複雑な会話の理解が難しい、文章の読み書きや計算が苦手、コミュニケーションをとる場面において特性がでるケースなど、個人差があります。

【配慮のポイント】

・図やイラストを活用した視覚に訴えるようなわかりやすい指示書の作成

・具体的で平易な表現で伝える

・理解したかどうかの確認 など

〇発達障がい・・・生まれつき脳機能の発達について障害があることをいい、特性の現れ方は様々です。

◇対人関係が苦手であったり強いこだわりを持つといった特徴のある「自閉スペクトラム症(ASD)」

◇多動性・衝動性・不注意などの特徴を持つ「注意欠陥多動性障害(ADHD)」

◇全般的な知的発達に遅れがないが、「聞く・話す・読む・書く・計算・推論する」といった能力に困難が生じる「学習障害(LD)」などがあります。

【配慮のポイント】

・急な予定変更に対応できない場合があるので、スケジュールの早めの共有や優先順位を明確に提示する

・視覚や聴覚などが過敏な方もいるので、感覚過敏対策としてサングラスや耳栓等の着用許可や衝立などの設置

・認知が独特である場合があるため、文章などでお互いの認識を再確認する

〇精神障がい・・・脳や心の機能がなんらかの原因でうまく働かず、日常生活に支障

がある状態のことをいいます。統合失調症・うつ病・躁うつ病・アルコール / 薬物中毒、アルツハイマー病など、様々な精神疾患が原因となっています。

【配慮のポイント】

・本人の特性や能力にあった目標を設定し、明確に指示

・短時間勤務や責任の少ない作業など、心身に負担がかからない段階から始める

・不安や緊張感をやわらげられるように1人になれる時間や、静かな場所で休憩できるような配慮

〇内部障がい・・・内臓や気管、免疫などの機能が低下し、日常生活を送るうえでの困難をもたらす障害で、外見からはわかりにくい為、周囲から「障害者である」と認識されず、理解を得づらいといった特徴があります。

身体障害者福祉法などで定められている以下の7つを示します。

◇心臓機能障害

◇腎臓機能障害

◇呼吸器機能障害

◇膀胱・直腸機能障害

◇小腸機能障害

◇ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害

◇肝臓機能障害

【配慮のポイント】

・膀胱または直腸機能障害の場合→オストメイト用のトイレ設置

・呼吸器機能障害の場合→禁煙や分煙がされているか

・心臓・呼吸器機能障害の場合→肉体的な負担が大きい業務を命じないよう留意する

まとめ

障害者雇用促進法に定められている「合理的配慮」、それがどの程度の範囲なのか迷う方もいると思います。障がい特性や個人の性格、育ってきた環境などによっても配慮する点が異なるため、配慮を必要とする当事者自身の意思表明や情報の共有、配慮を実施する企業との対話などによる合意形成が重要となります。

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